
気がつくと、
いつも同じ場所に、同じぬいぐるみがある。
メロがうちに来た日、
まだ何も分からなかった小さな体のそばに、
このうさぎを置いたことを思い出す。
迎えに行くと決めた日から、
なぜか
「この子には、最初から一緒にいるものが必要だ」
と思っていた。
明るい音楽が流れるショッピングモールの雑貨店で、
たまたま手に取ったのは、うさぎのぬいぐるみ。
理由はうまく説明できないのに、
ぬいぐるみを選ぶあの日の私は、
とても真剣だった。
そして、はじめましての日。
購入したうさぎのぬいぐるみを手に、
ブリーダーさんのお宅へ向かう車の中で、
まだ会ったことのないメロの姿を
何度も思い浮かべていた。
胸の奥が落ち着かなくて、
緊張して、
それでも楽しみで。
ついに会えたとき、
嬉しくて。
うさぎのぬいぐるみを片手に持ちながら、
「メロちゃん、はじめまして」
「メロちゃん、こんにちは」
同じ言葉を、
何度も、何度も繰り返していた。
まだ「メロ」という名前を、
自分のことだと知らないこの子は、
一瞬も振り向かない。
それでも、
いつか振り向いてくれるその日を
心のどこかで楽しみにしながら、
私は何度も、その名前を呼んでいた。
それから六年。
メロは大きくなって、
家の中を自分の居場所だと、ちゃんと知っている。
名前を呼べば振り向いて、
かわいらしい声で、きちんと返事もしてくれる。
あの頃には想像もできなかったほど、
当たり前のように、ここにいる。
それでも相変わらず、
このうさぎのぬいぐるみは、いつもそばにある。
寝起きで、まだ少し夢の中にいるとき。
甘えたいとき。
ふいに寂しくなったとき。
メロはそのうさぎをくわえて、
部屋の中を、よく運んでいる。
まるで
「これがあれば大丈夫」
そう言っているみたいに。
時間は、たしかに流れているのに、
変わらないものが、ちゃんとここにある。
それを見るたびに、
私はまた、あの日の名前の呼び方を思い出す。
少し緊張して、
少し照れくさくて、
それでも確かに、
「この子のそばにいる」ことを願っていた日のことを。







